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伊藤洋子さんのもうひとつの詩を紹介します。

私は樹が好きです

お花見の頃のサクラには、
冬の間 がんばったねぇ、偉いねぇと話しかけます
サクラは愚痴をこぼさないし、
花を咲かせたからと自慢もしません
黙って立っているサクラが愛おしいです

草や木の名前を覚えるのは 楽しいことです
サクラ、エノキ、カントウタンポポ、オオイヌノフグリ・・・・・
今まで 見過ごしていたのが、ぐっと身近になり、
友だちになったようで 嬉しくなります

でも、この事には 私の場合、大きな落とし穴があるのです
植物学者ならば、名前を入り口にして、さらに
生態を深く観察するでしょうが
私は「それ」と同定した途端、安心してしまって
「見る」ことを止めてしまいます。

若い頃から、いい絵を描くためには、よく見なければいけないと
思っていました
が、私は逆に描こうとしなければ、いつもぼんやりして、
何も見ていないことに、気がつきました
だから、見たつもりになっている自分を捨てて、
わかった気になっている自分を捨てて、
よく見るために、描こうと思います

老眼はもちろん、絶え間ない耳鳴りとめまいの中でスケッチを
するようになって、ようやく こんなつまらない事に
気がつきました
気づくのが遅いなあと思います

けれども、「よく見る」とは、必ずしても
微細に明瞭に見ることではないのかもしれません

よく見ることを続けていれば、
これから先、もっと感覚が鈍った時に、
別のものが見えるんじゃないか、
かえって、余計な飾りが削ぎ落とされ、
サクラであるという名前も捨て去った先に、
何か、
「ただ そこに在ること」が見えてきたらいいなあ と、
私は 楽しみにしているのです

本当は、地中から水を飲む音が聞こえるような樹を
描きたいのですが、それができないということは、
まだまだ 見方が良くないです

樹が私か、
私が樹か、
わからないようになりたいです
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